この本は第2次世界大戦中、学業半ばで戦争にかり出された学生の遺書であり、手紙であり、日記です。彼らは将来の夢を語り、死ぬ前日には家族を思い、精一杯の思いを伝えています。しかし、その文章に愚痴はなく、相手を思いやる言葉で溢れています。
彼らはすばらしい英知を持ち、するどい洞察力でこの戦争のむなしさを感じています。また、日本が負けることは正義が勝つ事だとも言っています。彼らはとてもよくわかっていて、でもどうすることもできず、特攻隊となり戦争に巻き込まれ死んでいった人もいます。日本はなんと大きな財産をなくしたのか、と思います。
本文より引用~ 「父母上様、去る六日の原子爆弾は非常に威力のあるものでした。自分はそのために顔面、背中、左腕を火傷致しました。しかし軍医殿を始め看護婦さん、友人たちの心よりなる手厚い看護の中に最期を遂げる自分はこの上もない幸福であります。」
これは「鈴木実」さんの遺言状の最後の部分です。彼は東大法学部の学生で、二十歳で亡くなります。この本は読み出すと、心に大きな固まりができて苦しくなります。「この上もない幸福です」と語る言葉の裏に、言葉にしていない彼らの悔しさや切なさがどうしても胸を突きます。戦争は一人一人の人間の顔が見えず、命が簡単に失われます。しかし、この本を読むとき、一人一人にドラマがあり、そんな簡単に失われていい命など1つもないと感じます。生きるということを真剣に考える本です。
酷薄な状況の中で、最後まで鋭敏な魂と明晰な知性を失うまいと努め、祖国と愛するものの未来を憂いながら死んでいった学徒兵たち。1949年の刊行以来、無数の読者の心を...
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