前回に引き続き、実践予定教材、多木浩二『消費されるスポーツ』に関連して、複数教材の検討をした。
事前に、4人から教材案が提出された。
雑誌記事『現代スポーツ評論』
「スポーツを消費すること」について別の視点で考えることができる題材にならないか、という観点で選んだもの。スポーツにおける寛容さや偶然性を論じている。
新聞記事『朝日新聞』、雑誌記事『Number』、ツイッター(大迫傑選手)など
「スポーツの消費者/被消費者の関係から、生産者/愛好者/支援者の関係へ」をテーマに、新聞記事、ツイッタ ー等の文章を読ませる。甲子園の問題など、生徒にとって身近なテーマの題材や、ソーシャルメディアを利用した新しいスポーツのあり方を紹介したものも。
國分功一郎『暇と退屈の倫理学』、若林幹夫『「誰か」の欲望を模倣する』、橋本努『ロスト近代』
「消費」を理解するための文章。消費の構造や、欲望の構造を知ることで、本文の読解の助けとし、さらに消費 社会以降の現代を考えるための視座に。
森博嗣『お金の減らし方』
本文に即した「スポーツとメディアの結びつき」のほか、「消費と生産」、消費と結びついてるもの、自分とお金との理想の関係などについて、グループで考える。
《会員からの意見》
・「理解する」レベルの読解力はある生徒。それを生活実感・感覚として落とし込めるようにしたい、
・現代文の授業では、むしろ生活とは異なる知のあり方に違和感を覚えてほしい(それが教養、知への入り口)。
・効率を求める気持ちが強い受験生。その現状の中で自分が面白いと思う文章を与えることだけで、果たして生徒が変容するのかと思う(何かの仕掛けがいるのではないか)。
・高校生は「あたまでっかち」で実感を伴わなくても「わくわく」するような体験をしてほしい。
・集団で同じ場で学んでいるからこそ、学びが促されるのではないか。
松井仁(当研究会代表世話人)より
・生徒に変化を促す。定義付けをしっかりして、知の背景を教えることが大事。現代文はこんなにおもしろいんだ、ということを示さないといけない。
・常識にどっぷりつかっている生徒から、常識論、通俗的道徳を、1枚1枚剥がしていき、戦っていくのが高校の現代文。そうすると生徒が「え! そうなんや!」という意外性に出会う。それが学びへの楽しさへ。
・やさしい教材で、価値観を揺るがす。授業では教師の人生観、世界観が出る。希望を埋め込んでほしい。
○参考図書
・加藤周一「オリンコーラ」
・多木浩二『スポーツを考える』
・三浦雅士『考える身体』『身体の零度』
・橋本努『自由に生きるとはどういうことか』