最新情報

【教材検討】根本美作子「近さと遠さと新型コロナウイルス」(2021年7月例会)

2021年08月09日(月)|by カプス管理2
 提案教材は、根本美作子「近さと遠さと新型コロナウイルス」(村上陽一郎編『コロナ後の世界を生きる』岩波新書 所収)。

 この文章は「わたしにとってかけがえのない人であった父は、死ぬことによって、父もまた一人の人にすぎな かったということを教えてくれた。」という父の死についての回想から始まる。コロナ禍によってつきつけられた 「自分も一人の人にすぎない」という原則と、人類という共同体の輪郭。さらにヨーロッパとアジアの地政学的な違い。 フランス文学者によるやや抽象的な文体だが、コロナ禍によって明らかになった、「たった一人の人間」としての脆弱さと、国境を超えたつながりを改めて考えさせる文章である。

 何より、コロナ禍によって大きく変わった、あるいはコロナ禍によって露見した、いまの社会・世界を高校生が考えることは必要不可欠であり、そのためにはどんな文章を読ませたいのか、という視点を持ち続けたい。
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【情報交換】ICTの整備状況は?(2021年7月例会)

2021年08月09日(月)|by カプス管理2
教育界は「GIGA スクール構想」が席巻。現場のICT教育事情はいまどうなっているのか、情報交換をした。
  • BYOD(Bring Your Own Device、自分のデバイスを学校に持ち込んで利用すること)が中心。
  • デバイス購入の補助金がない。
  • 個人所有のデバイスの利用を制限することには問題があるという声も。
  • 公立と私立の格差は拡大。私立の多くは昨年春の休校期間を機にオンライン環境が確立されている。
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【教材検討】中島敦「山月記」×カフカ「変身」(2021年6月例会)

2021年07月25日(日)|by カプス管理2
《教材検討》
 カフカ『変身』との合わせ読みを提案。
 「山月記」では詩業、科挙などに生徒がリアリティを感じられないのではないかと思い、中島敦が読んで影響を受けたというカフカを。「山月記」のあとに『変身』冒頭を読み、「なぜ中島敦は主人公を虎に変えたのか」などの課題に取り組む。

《会員からの意見》
  • 「虎になった理由」を様々に語る「山月記」と異なり、変身の理由が語られない(まさに不条理)なのが『変身』。その対比は面白い。
  • 「ちくま文学の森」シリーズの『変身ものがたり』(ちくま文庫)には「山月記」も含 めた変身譚が。
  • 変身譚といえば安部公房「デンデロカカリヤ」(新潮文庫)も。
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【実践報告】「山月記」を終えて(2021年6月例会)

2021年07月25日(日)|by カプス管理2
《実践報告》
「李徴が虎になったのはギフトなのか罰なのか」という問いからスタート。本文読解後に小川洋子・河合隼雄『生きるとは、自分の物語をつくること』を投げ込み教材として用いた。最初の問いは失敗だと感じたが、後半の課題では盛り上がる場面もあった。

《会員からの意見》
  • 教員が自分の解釈を述べることの是非について。
  • 前提を内包している問いは誘導的になってしまうのではないか。
  • 小説に評論を組み合わせることで偏った読みを導いてしまうことの難しさについて。
  • 小説の仕掛けの部分を学ばせていきたい。
  • 小説は初読で「とき・ところ・ひと・こと」を抑えて、2時間で終える。
  • 本文をもとに読むことが基本。
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【教材検討】「山月記」の実践を考える(2021年5月例会)

2021年07月25日(日)|by カプス管理2
《教材検討1》
「李徴が虎になったのはギフトなのか罰なのか」という問いからスタート。 合わせ読みとして、小川洋子・河合隼雄『生きるとは、自分の物語をつくること』を構想中。

《教材検討2》
千野帽子『人はなぜ物語を求めるのか』との合わせ読みによって、「李徴が虎になった理由」を解釈する。

《教材検討3》
「人虎伝」との合わせ読みから、「山と月」「臆病と自尊心」「人間と虎」などの二律背反の葛藤を考える。(道徳的な、一義的な読み方はすべきではない)

《会員からの意見》
  • 「山月記」の授業目標はなにか? →基本的には、描写に注目しながら小説の読み方を教える。合わせ読みはプラスアルファ。 「この教材を教える」のではなく、この教材を使って読解力を高めることが重要。
  • 「天保の末年」の時代背景をふまえて考える(参考:小森陽一『大人のための国語教科書』) →テクスト内で完結すべきではないか? 総花的にせず、焦点化すべき。
  • 「道徳的な読み」を導くような指導書は今はないのではないか。
  • ナラティブ・アプローチを使って「いろんな見方ができると視野が広くなる」と説明することも可能。
  • 自分の物語を作っていくことはアイデンティティの形成につながる。人物に同化してみることも。
  • 新カリで「文学国語」を採用しない学校では「山月記」を読まないだろう(数研出版「言語文化」には収録)。
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【教材検討】小松原織香 論文「〈キツネに騙される力〉を取り戻す」を考える(2021年5月例会)

2021年07月25日(日)|by カプス管理2
《論文の紹介》
キーワード
  • 環境保全の取り組みの中での「ローカルな知」
  • 内山節・近代化のなかで人々が失っていっ た生命世界との繋がりである「キツネに騙される力」
  • 石牟礼道子が水俣で描いた「生命世界との繋がりと喪失」
  • 体験型の環境教育・朗読
《会員からの意見》
  • 朗読によって「他者の言葉を語る」ことはまさに石牟礼道子が『苦海浄土』でおこなったこと。
  • 体験型の環境教育は、コロナ禍で(一時的に)失われていることの一つであり、今こそ意義を感じる。
  • 国語の授業で、理屈を超えて一歩踏み込むことの可能性は? →効率だけを求めるのではなく、一見意味のないようなところに意味を見出すことも重要である。新カリキュラムで「論理国語」と「文学国語」が断絶してしまったことと関連があるのでは。 →文学にも当然論理、他者との関係の中での論理が存在する。
  • 朗読ではマンガ『花もて語れ』(片山ユキヲ)がオススメ。
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【教材検討】視点を広げる―「市民による政治」「民主主義」「コロナ」へ―(2021年4月例会)

2021年07月25日(日)|by カプス管理2
《教材検討》
 「市民」のイメージ」から視点を広げるための4点。
 教材として山口二郎『いまを生きるための政治学』、丸山眞男「「である」ことと「する」こと」、宇野重規『民主主義とは何か』などを提案した。

《会員からの意見》
  • 政治に身近なところから関わっていくという視点で考えさせたい。
  • コロナ禍では政治が自分に関わるという意識が高まった。民主主義そのものを疑う姿勢も。
  • 学力層の幅がある予備校では、教材のレベルを生徒ごとに対応を分けていく必要がある。
  • 「市民」という抽象概念を理解できる層は3割。読解力はあっても概念理解ができない、というのが実態では。
  • 「どういうときに正しさや正義を発動して分け持つのか」など、むき出しの民主主義とは違うものを読ませたい。また、3つくらいのトピックから選んで、自分との関係を書いていく言語活動と組み合わせたい。
  • 全員が理解できる教材は存在しない。いい意味で諦めて、おおらかな気持ちで授業をする必要も。
  • 小説が使えるのではないか。(真山仁『オペレーション Z』第 章など)→「論理国語」で小説を扱える。
  • 動画として、『12人の怒れる男』(1957年)、「昔話法廷」(NHK Eテレ)など。
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【実践報告】日野啓三「「市民」のイメージ」(2021年4月例会)

2021年07月25日(日)|by カプス管理2
《実践報告》
4月最初の教材。200字要約のあと、学習の手引きをもとに本文読解という流れで授業。生徒が「市民」 について持っているイメージがバラバラで要約が不発だったが、教科書の用語解説ページで補足した。

《会員からの意見》
  • 生徒は「市民」と聞いたときに戸惑うはず。導入に工夫があってもよいのではないか。 →特に、現代文が苦手な生徒には、生徒にとって身近な話題によってつかみとしての導入は必要。
  • 「市民団体」「市民社会」など、かつての「市民」に対するイメージを共有していた時代とは異なる。 →具体的なイメージを持たせたらよいのでは?
  • 学校行事と組み合わせて「市民」をイメージさせる。
  • 共生社会、地域協働、高校生が地域に関わる活動から「市民」をイメージさせる。
  • 教科横断的に公共の授業と重ね合わせて、公共の教科書と一緒に読むのが面白いのでは。
  • 読解の前に背景知識を入れるべきか? →具体例から理解するように促す手引きを活用し、読むことで考えることを促したい。 →1時間目で要約に加えて、語句プリント「国民」「臣民」「人民」「民衆」「市民」を辞書で引かせる。
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【教材検討】「独ソ戦」×「民主主義」(2021年3月例会)

2021年07月24日(土)|by カプス管理2
《教材検討》
大木毅『独ソ戦』を中心にしたもの。合わせ読みとして宇野重規『民主主義とは何か』を取 り上げ、後者は「多数の暴政」や「民主主義とは、制度か理念か」をテーマとして扱う。

《会員からの意見》
  • 『独ソ戦』は時代背景等の知識が必要で、内容が難しいのではないか。
  • 何のために読ませるのかというテーマを先に立ててから読ませたほうがいいかもしれない。
  • 意見表明をすることで政治が変わったことは考えさせたい(関連:森喜朗辞任問題)。
  • 大テーマ:「分断」、サブテーマ:「民主主義」「コロナ」「世代間格差」 また、村山綾「コロナ禍における差別と不寛容」も扱った。 今後は、授業実践をもとに教材検討を重ねていく予定である。
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【教材検討】「将来人」の目で見直す社会(2021年3月例会)

2021年07月24日(土)|by カプス管理2
《教材検討》
岩井克人「未来世代への責任」との合わせ読みとして、花木伸行「「将来人」の 目で見直す社会」について。将来世代の視点に立って政策を考える「フューチャー・デザイン」という考え方を紹 介している。

《会員からの意見》
  • 子どもの権利についての考え方からも、子どもが自分の意見を表明していくように支援することが必要
  • そもそも大人が政治的に成熟していない、主体的に考えられないのではないか。それを子どもに求められるか?
  • 生徒会選挙、校外学習など、自分たちで決める体験が必要。
  • 芦屋市在住の高校生による市民活動団体「あしや部」に参画。学校では取り上げられない政治問題も。
  • 18歳選挙権による主権者教育も「政治的中立性」の名のもとに現場が萎縮してしまった。
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