カプスとは?

カプスの理念

2016年04月10日(日)|by HP管理
学ぶに如かず
神戸国語研究会 代表世話人 松井 仁

「やはり、国語教育研究会カプスを立ち上げたのは時機に適っていた。」
というのも次のような事象が耳目に触れたからである。

(その1)
 2014年12月、NHKのテレビ番組「クローズアップ現代」で、大学生の生活に関するアンケート調査を取り上げ、その中で「大学生の4割が読書時間ゼロ」という結果を報じていた。学生のこの知の無関心をどう見るか、番組ではインターネットの情報が読書環境をかえたという分析をしていた。果たしてそうなのだろうか。

(その2)
 ミステリー文学の泰斗で、いま若者に現代社会の病理をやさしく説く作家赤川次郎氏の言より――学生に対して「若いうちにいい芸術に触れてね。」と話すと「でもコンサートは高いので、5000円あれば好きな歌手のライブに行く」という答えが返ってきた。赤川氏は言う、人間として成長し、成熟するために必要な「学ぶ」という感覚が失われている。感動することを知らずに育つことは恐ろしい。今学生は、興奮と感動を取り違えている、と。


 この2つのことから見えてくることは、想像力と、何かを判断する際の腐葉土ともいうべき基礎教養の有無であろう。わたしたちの研究会のこれまでの活動は、この2つの有意味を時には「楽しく、熱く」、時には「厳しく地道に」探究してきたと自負している。

 思えば、この研究会の誕生は1997年(平成9年)私が50歳の時だった。もうかれこれ18年の歳月を刻んでいる。設立の趣旨は、既刊『生き方GET』VOL.4のあとがきに記しているので、ここでは割愛するが、一言だけ付言するなら、高校生の一般的な国語の授業の所感(ヒマ・退屈・眠い・まるで写経の時間)を吹き飛ばす一種の異議申し立てであった。これは、教科書文脈(感化主義・心理主義色彩)を払拭し、イキのいい、新しい教材開発の試み、アーサーワード(英国の教育学者)のいう「生徒の心に火を灯す」教育主義への志向である。

 さて、平成も四半世紀が経ち、峠という時代に潮目に向かっている。今とんでもない、してはいけない、うなずけない社会状況が作られつつある。このような時こそ、教育、教師の出番であろう。教育は深いところで社会進歩をめざす営みである。だから、教師自身が社会進歩をめざし、その一翼に教育という場で参加しているという自覚が結びついているかどうかが問われよう。

 わたしたち国語教育に携わる者が、イの一番にやらなければならないことは、ものを考える時の枠組みである文法、それもいわゆる品詞論や活用論に限定される「学校文法」ではなく、生きて働く、考える力を育てる日本語文法をここに意識しなければならない。この土台の上に生徒の個性にあったことばを育てていくことが大事だろう。また、他者への創造力を働かせ、社会構造への視線をのばすイキのいい教材を提示し、その中でものの見方、考え方のベースを学ぶための支援ができればと思う。

 30余名の小さな研究会である私たちの「神戸国語研究会カプス」は、今のべたようなことを基本的視点に据えて、これまで人との共感、連帯、連携を広げながら、1歩ずつ進んできた。先の確かな予感と足跡に確信をもちつつ、次の新しい節目にいま向かおうとしている。

 このたび『生き方GET』VOL.1~VOL.4を研究会で総点検し、時代の風に負けない力のある教材、授業実践の中で生徒から強い支持を受けた教材を選択し、「BEST10」として上梓することとした。

 この『BEST10』」が、国語教育関係者をはじめとしてより多くの方々にとって一本の藁となり、またそれが連動して、未来を紡ぐ道標の一つとなれば望外の喜びである。

 とまれ、「学ぶに如かず」――ともに頑張りましょう。

神戸国語教育研究会カプス規約

2011年10月25日(火)|by HP管理
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