実践報告

【実践報告】港千尋「擬似群衆の時代」(2022年2月例会)

2022年03月21日(月)|by カプス管理2
 実践教材は港千尋「疑似群衆の時代」。本文読解のあと、ベルリ の壁の説明文や、本文出典が書かれた頃の2011年の新聞記事、反原発デモの記事などを提示し、課題として「実際の芸術や政治の場面における「待つ群衆」の事例」を話し合わせた。

 実践前はこの課題についての生徒の反応が心配されたが、さまざまな補助的な材料を提示したこともあり、生徒は米大統領選挙やBLM運動を事例として挙げて話し合うことができていた。

会員からは、#MeToo、検察庁法改正問題、森喜朗問題などのSNSの「トレンド」に見られるような動き(「ハッシュタグデモ」等)が事例としてイメ ージしやすいのではないかという意見が出た。
コメント(0)

【実践報告】「いのち」を「問う」(2021年10月例会)

2021年12月12日(日)|by カプス管理2
 日本国語教育学会『月刊国語教育研究』(10月号)に掲載された実践報告論文「多様な評価方法を組み合わせた探究へのステップー複数のテキストをもとに「いのち」を「問う」」について。
 もともとは学会の 全国大会での発表を予定していたもののコロナで中止に。実践報告欄に投稿し、査読を経て掲載された。 根拠立てて自分の意見を書くこと、「問い立て」や探究、複数資料の読解、などに焦点を当て、安楽死やQOL をめぐる生命倫理をテーマにした単元である。
 平成30年度「国語総合」の実践ではあるが、新カリのポイントを踏まえながら、評価を工夫して授業を組んだ。
 会員からは批評文の交流・共有について意見が出た。
コメント(0)

【実践報告】「インドへの旅」カプスの原点とは?(2021年10月例会)

2021年12月12日(日)|by カプス管理2
 吉田ルイ子「インドへの旅」〔『高校生のための批評入門』(ちくま学芸文庫)所収〕。カプスでこそ開発できる教材、生徒の価値観を揺さぶるもの、社会構造への視線をのばすもの。それらを求めて実践した。

 小説「檸檬」のあと、担任のクラスで1時間の授業。範読の後、説明や発問をしながら読みを深めて、筆者の 批評性に迫る。「臭い」と「匂い」の対比を読み解き、「日本から持ち込んだ毒薬」は「人間本来の身体性を覆い隠している文明」であることに至った。

 生徒からは「サイコーの教材」「自分の視野を広げることのできる良い教材」という声のほか「生きることを問われる1時間だった」という感想もあった。

《会員からの意見》
  • ・生徒から上記のような言葉が出てきているのは収穫。
  • 黙読か範読か、教材や授業場面で使い分けを。
  • 指導者の狙い通り、思う方向に連れていきたい、という思いの強さについて。 →オープンエンドで「ともに考える」という姿勢(探究ベース)
  • 本教材では 60~70年代の「インドブーム」における日本人のあり方に踏み込めていない。
  • 「ぼくは、本当にいいことしたのだろうか」に焦点化させたい。
コメント(0)

【実践報告】スピーチと新聞ワークシートの連動(2021年9月例会)

2021年12月12日(日)|by カプス管理2
 担任クラスでの終礼時のスピーチと、「読売新聞ワークシート通信」を用いた実践。

 東京五輪開催の是非や日本のコロナ対策といった賛否の分かれるタイムリーな話題を用いて、社会情勢に興味を持って学び続け、自分の意見を表現することなどをねらいとして実施した。
 同調圧力が強い社会で、学校の教員も「炎上する」「たたかれる」ことを避けている。特に政治的な話題に触れることは難しく、教師の覚悟が必要になってくる。しかしカプスが長年取り組んできた、生徒の価値観を揺さぶる問いや賛否が分かれる問いに向き合うことが、「思考・判断」である。
 生徒の発表や記述は賛成・反対が拮抗する 結果となり、「社会への怒り」を表現する場面も見られた。他者や教員の意見を受け入れながら自分の意見を深めていく取り組みとなった。

《会員からの意見》
  • 学校全体の取り組みになることを期待。
  • スピーチの有用性について
  • 職場の「朝の一言」で世代間のギャップを埋める取り組み。
  • 1時間で300 字の原稿を作成して実施する「1分間スピーチ」は、生徒間の交流が進むものになった。
  • 新聞を扱った授業では新聞社の政治的な立ち位置への配慮が必要。
コメント(0)

【実践報告】「山月記」を終えて(2021年6月例会)

2021年07月25日(日)|by カプス管理2
《実践報告》
「李徴が虎になったのはギフトなのか罰なのか」という問いからスタート。本文読解後に小川洋子・河合隼雄『生きるとは、自分の物語をつくること』を投げ込み教材として用いた。最初の問いは失敗だと感じたが、後半の課題では盛り上がる場面もあった。

《会員からの意見》
  • 教員が自分の解釈を述べることの是非について。
  • 前提を内包している問いは誘導的になってしまうのではないか。
  • 小説に評論を組み合わせることで偏った読みを導いてしまうことの難しさについて。
  • 小説の仕掛けの部分を学ばせていきたい。
  • 小説は初読で「とき・ところ・ひと・こと」を抑えて、2時間で終える。
  • 本文をもとに読むことが基本。
コメント(0)

【教材検討】「山月記」の実践を考える(2021年5月例会)

2021年07月25日(日)|by カプス管理2
《教材検討1》
「李徴が虎になったのはギフトなのか罰なのか」という問いからスタート。 合わせ読みとして、小川洋子・河合隼雄『生きるとは、自分の物語をつくること』を構想中。

《教材検討2》
千野帽子『人はなぜ物語を求めるのか』との合わせ読みによって、「李徴が虎になった理由」を解釈する。

《教材検討3》
「人虎伝」との合わせ読みから、「山と月」「臆病と自尊心」「人間と虎」などの二律背反の葛藤を考える。(道徳的な、一義的な読み方はすべきではない)

《会員からの意見》
  • 「山月記」の授業目標はなにか? →基本的には、描写に注目しながら小説の読み方を教える。合わせ読みはプラスアルファ。 「この教材を教える」のではなく、この教材を使って読解力を高めることが重要。
  • 「天保の末年」の時代背景をふまえて考える(参考:小森陽一『大人のための国語教科書』) →テクスト内で完結すべきではないか? 総花的にせず、焦点化すべき。
  • 「道徳的な読み」を導くような指導書は今はないのではないか。
  • ナラティブ・アプローチを使って「いろんな見方ができると視野が広くなる」と説明することも可能。
  • 自分の物語を作っていくことはアイデンティティの形成につながる。人物に同化してみることも。
  • 新カリで「文学国語」を採用しない学校では「山月記」を読まないだろう(数研出版「言語文化」には収録)。
コメント(0)

【実践報告】日野啓三「「市民」のイメージ」(2021年4月例会)

2021年07月25日(日)|by カプス管理2
《実践報告》
4月最初の教材。200字要約のあと、学習の手引きをもとに本文読解という流れで授業。生徒が「市民」 について持っているイメージがバラバラで要約が不発だったが、教科書の用語解説ページで補足した。

《会員からの意見》
  • 生徒は「市民」と聞いたときに戸惑うはず。導入に工夫があってもよいのではないか。 →特に、現代文が苦手な生徒には、生徒にとって身近な話題によってつかみとしての導入は必要。
  • 「市民団体」「市民社会」など、かつての「市民」に対するイメージを共有していた時代とは異なる。 →具体的なイメージを持たせたらよいのでは?
  • 学校行事と組み合わせて「市民」をイメージさせる。
  • 共生社会、地域協働、高校生が地域に関わる活動から「市民」をイメージさせる。
  • 教科横断的に公共の授業と重ね合わせて、公共の教科書と一緒に読むのが面白いのでは。
  • 読解の前に背景知識を入れるべきか? →具体例から理解するように促す手引きを活用し、読むことで考えることを促したい。 →1時間目で要約に加えて、語句プリント「国民」「臣民」「人民」「民衆」「市民」を辞書で引かせる。
コメント(0)

【実践報告】小説から身体論を考える(2021年2月例会)

2021年07月24日(土)|by カプス管理2
《実践報告》
教科書教材「自分の身体」(鷲田清一)の後、生徒の反応や実態をもとに予定していた指導案を修正。小説を教材に身体論を扱う。

教材はティム・オブライエン(村上春樹訳)「待ち伏せ」[筑摩書房『精選国語総合 現代文編』所収]。疑問に思う点や印象に残った表現などを挙げた。

《会員からの意見》
  • 良い教材。意外な組み合わせだが面白い。
  • 「条件反射的」の訳語について。
  • 「待ち伏せ」は身体論で読むことはできない。この小説は自分ではわからないことで身体が動いたことが特徴。
  • 身体は制御が効かないことを言いたい小説ではない。この小説を身体論に包摂してしまってはならないのでは。
  • ベトナム戦争の加害性を免罪符としてしまい、間違ったメッセージを受け取らせてしまう危険性も。
  • 複数教材は提示する教員の意図が働く。特に評論→小説では、小説の読みの方向性を決めてしまう難しさも。
コメント(0)

【実践報告】身近でタイムリーな話題から考える(2021年2月例会)

2021年07月24日(土)|by カプス管理2
《実践報告》
教科書教材「グローバル化とグローバリズム」(平川克美)を読んだ後、要約→読解。その後、最上敏樹 「世界隔離を終えるとき」を、ミニ要約・設問プリントをもとに読む。ペアワークで意見交換、全体発表。

問1 自分の身の回りで浮かび上がった課題、問題はどんなことですか?
問2 あなたは昨年3月からの国家の施策についてどう感じていましたか?
問3 どういう再出発を筆者は提案しているか。またそのことを手掛かりに自分の考えを述べましょう。

《会員からの意見》
  • 身近でタイムリーな、政治に関する話題。こういうことを考えさせたい。
  • 同じ問いで別教材でも扱える可能性がある。
  • 教科書教材と関連させた問いにできないか。→1年生ではまずテーマが重なる形、比較読みのステップで十分ではないか。
  • 投げ込み教材への補助としてミニ要約は有効であった。
コメント(0)

今を考えるための教材 ―コロナ禍を考える 萱野稔人『ナショナリズムは悪なのか』(2020年8月例会)

2020年09月01日(火)|by カプス管理2
コロナ禍の今だからこそ生徒に読ませたい「今を考えるための教材」。

「自粛要請に従う」「自粛警察」など、コロナ禍の日本がフーコーの言う「生権力による統治」の典型となっていることから、萱野稔人『ナショナリズムは悪なのか』より、フーコーの「規律・訓練」を解説した文章を提案。

人々が 「常に監視されている」ことで服従的になるありさまは、学校制度そのものでもある。

会員からは、教室で読ませることは「ヒヤヒヤする」という意見の一方、「集団行動」などで学校制度に従順になっている(三浦雅士『身体の零度』)生徒には意識的にあってほしい、という意見も。

また、独メルケル首相のスピーチや青森県の貼り紙のニュースも関連させられるという意見も出た。さらに、単発で投げ込むよりも、教科書教材と組み合わせられないか、という提案が出た。
コメント(0)
このページのトップへ